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死力尽くした!真央が3連覇!

死力尽くした!真央が3連覇!/フィギュア(サンケイスポーツ)

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演技が終わり、晴れ晴れとした笑顔を見せる真央。見事に3
連覇を達成した


 全日本選手権最終日(27日、長野・ビッグハット)世界女王の浅田真央(18)=愛知・中京大中京高=が合計182.45点で3連覇を果たした。フリーでは2度挑んだトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)がいずれも回転不足と判定されたが、うまく演技をまとめ、ショートプログラム(SP)2位から逆転した。2位はフリーで1位となった村主章枝(27)=avex。安藤美姫(21)=トヨタ自動車=は練習で村主と激突して右ひざを負傷し、3位に終わった。

 寸分の力も残っていなかった。「仮面舞踏会」の重厚な旋律を舞い切った真央は、思わず天を仰ぎ目をつむった。「今年がやっとすべて終わった、という気持ちでした」。死力を尽くしてのV3。11月末のNHK杯から3大会連続Vで、08年を締めくくった。

 世界女王の底力で大荒れの展開を制した。3回転半ジャンプは、2度とも着氷しながら回転不足で減点。サルコーは1回転しか跳べず、今季1度も成功がない2連続3回転は2つ目が回転不足となった。前日のSPは中野、この日のフリーも村主に1位を譲り、ともに2位。ジャンプなどの技術点は全体の3位にとどまったが、表現力を示す演技点の高さでカバーし、3連覇をつかんだ。

 「SPがダメ、というのは今までもあったパターン。攻める気持ちだけ忘れずに滑った」と真央。12月上旬のグランプリ(GP)ファイナルでもSPはライバルの金妍児(キム・ヨナ=韓国)に首位を譲りながら、フリーで逆転。大舞台を踏むごとに精神的な強さを増している。

 タフな心を支えるのは強靭(きょうじん)な肉体だ。今年3月末から専属のコンディショニングコーチとして牧野講平さん(29)と契約。豊田市内に転居した牧野さんと二人三脚でトレーニングを積み、筋力、スピード、瞬発力の強化を図ってきた。右足で着氷することが多いため偏っていた体のバランスを修正し故障防止にも努めた。

 「どんなに辛いトレーニングでも前向きに取り組んでくれる。さらに上を目指す姿勢が伝わってきます」と牧野さん。2度の3回転半アクセルに挑める筋力とけがのない肉体は、毎日の地道な鍛錬が作り出したものだ。

 2連覇のかかる世界選手権(来年3月、ロサンゼルス)の切符も手にした。バンクーバー五輪の選手枠を決める大事な大会だけに「コンディションをベストにもっていけるようにしたい」。つかの間の松の内を過ごした後は、再び世界一への戦いが待っている。(佐藤ハルカ)

デゴイチ、「空だき」で走行不能

デゴイチ、「空だき」で走行不能 営業運転車両ゼロに(朝日新聞)2008年12月27日

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11月17日、SL信越120周年号の試運転で走るD51=長野県信濃町、高山顕治撮影

 昭和の時代に「デゴイチ」の愛称で親しまれた蒸気機関車D51のうち、いまも唯一営業運転していた車両(JR東日本所有、1940年製造)が、ボイラーの「空だき」で走行不能になっている。管理ミスが原因の可能性がある。「修理には最大1年半」(JR関係者)とも言われ、今後のイベント運行は白紙となっている。

 JR東日本によると、走行不能となったのは今月14日。宮城県美里町の車両基地で試験運転をするため、ボイラー内にある火室(かしつ)に石炭を入れて燃やしていた。しかし、ボイラー内の水量が少なく、火室の外壁の温度が330度以上に上昇。外壁の一部が熱で溶け、火室が壊れたという。

 同社や鉄道博物館(さいたま市)によると、D51は1936(昭和11)年ごろから製造された。総生産両数は1115両と機関車の種類として最も多く、馬力も強かった。このため「蒸気機関車の代名詞的存在」として人気があった。旧国鉄では75年12月に定期運行を終えた。

 国内で現在、動く状態で保存されているのは2両。だが、1両は梅小路蒸気機関車館(京都市)にあり、一般の線路を走っているのは今回故障した車両だけという。

 火室が壊れたD51は今後、福島県郡山市にある車両基地で解体され、修理される。同社はボイラー内の水位の低下について、「水漏れの可能性がある」としている。JR関係者は「火入れした状態の時に水位が適切かどうかを点検することは基本」と管理ミスを指摘する。

 このD51は故障後の20、21日には宮城と山形県で運行される予定だったが、別の機関車で代用した。来年2月中旬に千葉県内でも運行予定があるが、キャンセルの可能性が高い。

 07年度には、東日本各地で観光キャンペーンなどの臨時列車として約50日間運行。乗務員の訓練などを合わせると運行日数は150日に上った。(峯俊一平)

大手製造業16社の内部留保33兆円 人は減らすのに

大手製造業16社の内部留保33兆円 人は減らすのに…(東京新聞)2008年12月24日

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 トヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業16社が大規模な人員削減を進める一方で、株主対策や財務基盤強化を重視した経営を続けていることが23日、共同通信社の集計で明らかになった。2008年度は純利益減少が必至の情勢だが、16社のうち5社が増配の方針、前期実績維持とする企業も5社だった。

 利益から配当金などを引いた内部留保の16社の合計額は08年9月末で約33兆6000億円。景気回復前の02年3月期末から倍増し、空前の規模に積み上がった。

 過去の好景気による利益が、人件費に回らず企業内部にため込まれている。世界的な景気減速が続く中で、各社は内部留保などの使途について慎重に検討するとみられる。一方で08年4月以降に判明した各社の人員削減合計数は約4万人に上り、今後も人員削減を中心とするリストラは加速する見通しだ。

 派遣社員などで組織する労働組合は「労働者への還元が不十分なまま利益をため込んだ上、業績が不透明になった途端、安易に人減らしに頼っている」と批判している。

 減益見通しにもかかわらず増配予想を変えていないのはソニー、パナソニック。これまでのところキヤノンは配当について、08年3月期実績水準を維持、トヨタ自動車は未定としている。ただ景気悪化の速さに企業が戸惑っている面もあり、今後は見直す動きが出てくるとの見方もある。

 調査対象は、キヤノンなど電機・精密9社とトヨタ自動車など自動車業界7社。02年3月期(キヤノンのみ01年12月期)と08年9月末時点の決算資料や各企業からの回答を基に集計。内部留保は法定の積立金を除く剰余金や各種の評価損益などを合計した。

核報復を米に要請 65年当時、佐藤首相

核報復を米に要請 65年当時、佐藤首相(東京新聞)2008年12月22日

 佐藤栄作首相が一九六五年一月、首相として初訪米した際のマクナマラ国防長官との会談で、中国と戦争になった場合には「米国が直ちに核による報復を行うことを期待している」と、先制使用も含めた核による即時報復を要請していたことが、二十二日付で外務省が公開した外交文書で明らかになった。

 さらに首相は「洋上のもの(核)ならば直ちに発動できるのではないか」と、核の持ち込み黙認とも受け取れる発言もしていた。首相が前日のジョンソン大統領との首脳会談で「核の傘」の保証を求めていたことはすでに明らかになっているが、先制核使用まで念頭に置いていたことが新たに分かった。

 マクナマラ長官との会談は、首相の宿泊先のブレアハウス(迎賓館)で行われた。長官は、六四年十月に中国の原爆実験が成功したことについて「今後二、三年でいかに発展するか注目に値する」と指摘。日本の核開発に対する基本姿勢の説明を求めた。

 首相は、日本は核開発能力を持つが核兵器製造の考えがないことを強調。米側に核の持ち込みに慎重な発言を求めたが、「戦争になれば話は別」と、米国が直ちに核で報復することへの期待を表明した。さらに洋上の艦船にある核兵器なら即時使用できるのではないかとの認識を付け加えた。

 また、日本が平和利用目的で開発していたロケットについて「必要があれば軍用にも使うことができる」と軍事転用の可能性に言及していたことも分かった。

 長官はベトナム戦争の戦況悪化などを背景に、日本が防衛産業を育成し、軍事的援助を「アジア諸国に与えることはできないか」と、アジアの諸国への装備供給を打診。首相は防衛産業育成が必要との認識を示していた。

09年度政府予算の財務省原案

朝日新聞社説 選挙の年の予算―危機克服の戦略を競え

 選挙の年の予算―危機克服の戦略を競え 麻生政権で初の通年予算となる09年度の財務省原案が示された。来年は確実に総選挙がある。それを前にした予算は、政府・与党が国民に示す政策メッセージの集大成であるはずだ。

 世界的規模で広がる金融危機や深刻化する不況を克服して、次の成長軌道を描く。その長期戦略の一端でもなければならない。

 総額88兆5500億円で08年度を5.5兆円も上回り当初ベースで過去最大に膨らんだ予算は、麻生政権の姿さながら旧態依然の公共事業や地方へのばらまきが目立つ。残念ながら新たな時代を切り開く先導役にはなれまい。

■財政規律は形ばかり

 しかも、歳出抑制の体裁は維持しつつ、実態は財政出動の帳尻あわせばかりだ。06年度の骨太方針で決めた社会保障費の抑制幅2200億円を残したものの、それは形だけ。埋蔵金や道路財源を転用して財源が手当てできたとして、抑制するのは230億円にとどまる。公共事業費も削減をいいながら、不況対策の予備費や地方交付税の増額各1兆円の中に、別口の公共事業が潜り込む可能性が高い。

 かつてない世界同時不況の中では、歳出カットに努めてきた財政を、いま経済の下支えのため緩めざるを得ないのは間違いない。

 しかし、財政規律を守ったふりをしながら、ちまちまと財政出動を盛り込んだ結果、どれだけが一時的な緊急対策なのか見えにくくなった。これでは景気回復後に元へ戻すべき歳出規模が不透明になり、はたして規律を取り戻せるか、強い懸念が残る。

 一時的に財政路線を転換するのならそれを明確にし、集中的に予算を投入する優先分野を決め、国民の納得を得なくてはならない。そうでないとばらまきの寄せ集めに終わってしまう。

■麻生政権の限界あらわ

 道路特定財源についても福田政権から一般財源化を引き継いだものの、結局は大半が従来通り道路建設に回る。旧来の支持層に配慮して、大胆な切り込みができない。自民党政権の限界を示している。

 同時に、支出の無駄ゼロへの取り組みも進んではいない。随意契約が多く補助金などへの切り込みは見えない。族議員と官僚の権限に政治が切り込めないことを意味している。

 そればかりか、予算膨張の財源や、基礎年金への国庫負担拡大には、財政投融資特別会計などの剰余金、いわゆる埋蔵金が投入された。

 埋蔵金は2兆円の定額給付金の元手にも流用されており、増税を嫌う政治家にせっつかれて、官僚たちが次から次に繰り出した。一体どれだけ隠れた財源があるのか、その「へそくり」の多さに国民はあきれている。

 これだけあっけなく献上されるのを見ると、準備しておくことが本当に必要なのか、納得がいかなくなってくる。こうした剰余金はなくし、一般会計へ戻すべきではないのか。それなくして負担増などは言い出せない。

 予算をこうして眺めると、そもそも選挙の顔として期待された政権が、予想外の経済危機に直面し、旧来型の発想で支持基盤へばらまく予算をかき集めた、といわざるを得ない。

 足元の雇用対策や地方対策はもちろん大切だが、同時に、5年先10年先の日本経済の将来像を見越した長期構想こそ重要だ。いかに経済に競争力をつけ、次の成長ステージを準備するか。それがなければ、危機を克服しても、その後の国際競争から立ち遅れ、衰退していくしかない。

 エネルギーや環境対策などへの投資をどう強めていくか。少子高齢化社会にふさわしい社会資本をいかに築いていくか。こうした大胆な青写真がとりわけ選挙の年の予算には不可欠だ。

■民主党もビジョンを

 金融危機の震源地、米国では、オバマ次期大統領が危機脱出のための計画の一環として、低炭素社会への競争力確保を打ち出した。10年間で1500億ドル(約14兆円)を、再生可能エネルギーの開発に投資する計画を掲げている。グリーン・ニューディールといわれるものだ。

 1930年代、大恐慌を大規模ダムなどの公共事業で乗り切ろうとしたニューディール計画を手本にしたものだ。これによって500万人の雇用を作り出すという。成功すれば、石油に頼らない21世紀型経済社会のモデルを米国が創造するかも知れない。

 日本は、銀行破綻(はたん)などが起きておらず、バブルの被害が少ないはずなのに、こうした野心的な計画をなぜ打ち出せないのか。政治に自前のビジョンが乏しいからだ。

 その責任は与党だけにあるのではない。選挙で政権選択を競う民主党にも、同じ重さを担って欲しい。

 無論、予算を編成できるのは現政権だけだ。しかし、ビジョンの優劣を競って国民がそれを支持すれば、政権奪取後に、そのビジョンに沿って予算を組み替えることもできる。

 今月訪米し、30人を超す政財界関係者と会談した民主党の岡田克也副代表は、オバマ構想について「将来につながる投資は非常に大事。日本でももちろん必要だ」と述べている。

 外需頼みの産業構造と、危機に対しばらまきしかできない政治を「チェンジ」する。そんな日本版ニューディールを練り、選挙で示してほしい。


ブルートレイン「はやぶさ」に乗ってみた

来春廃止 ブルートレイン「はやぶさ」に乗ってみた(朝日新聞)2008年12月19日

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東京駅に入線するブルートレイン「はやぶさ」「富士」。これから
機関車を逆方向につけかえる「機回し」がある=12月1日


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はやぶさの方向幕。国鉄形式のままだ

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下関に到着。これから関門トンネルに対応した機関車につけかえる

 JRグループは12月19日、東京と九州を結ぶ寝台特急ブルートレインとして、最後まで残っていた「はやぶさ」「富士」の廃止を正式に発表した。09年3月14日のダイヤ改定で廃止される。

 「ブルートレイン」は、1970~80年代に大ブームとなり、東京駅からは毎日、九州に向けて何本もの列車が走った。しかし、今や東京駅を出発するブルートレインは1日1本。今や時代遅れともいえる「汽車旅」の独特の魅力に迫ってみるべく、アサヒ・コム編集部の取材班が、寝台特急「はやぶさ」(東京-熊本間)の約1300キロの長旅を体験した。(取材日:2008年12月1~2日。取材協力:JR各社)

     ◇

東京駅 機関車の方向転換「機回し」

 08年12月1日17時21分、東京駅10番線。先頭の電気機関車含めて計13両の青い列車が滑り込んできた。九州ゆきのブルートレインとして残る最後の1本だ。東京-熊本間の「はやぶさ」と、東京-大分間の「富士」。九州の門司までは、併結して走る。

 実は東京駅につく唯一の客車列車でもある。客車列車は、エンジンやモーターなど動力を持たない車両で構成された列車で、先頭に機関車をつけて、機関車が引っ張る形で運転される。そのため、方向転換をするには、機関車をもう一方の端まで運んで、連結しなおす必要がある。これを「機回し」といい、ブルートレインの発車前の見どころだ。

 昭和30~40年代まで、長距離列車の多くは客車列車だったため、当時は当たり前だった光景だが、いま東京駅でこれが見られるのはこの1回だけだ。

     ◇

いよいよ出発~車内見学

 東京-熱海 18時03分。バタンと音を立てて折り戸が閉まった。ピーーッと長めの汽笛。列車はゆっくりと動き出した。有楽町、新橋。よく使う山手線のホームと、寝台車の中の自分のギャップがなんだかくすぐったい。

 品川をすぎた辺りから、スピードが上がり、特急列車らしい走りに。大森、蒲田、川崎─。通勤客でいっぱいのホームが近づいては遠ざかる。

 東京の次に止まるのは横浜だ。その後は、熱海まで止まらない。停車駅は絞られている。横浜の手前で、車掌が検札にやってきた。所属は、JR西日本の下関乗務員センターだという。

 車内を見学することにしよう。列車は12両編成。前の6両が熊本ゆき「はやぶさ」。後ろの6両が大分ゆきの「富士」。関門海峡を渡った門司で、切り離される。「はやぶさ」の6両のうち、個室車両は2両。1両が「シングルDX」と名付けられたA寝台個室。もう1両が「ソロ」という名のB寝台個室。残り4両は、廊下と寝台にしきりのない一般のB寝台だ。取材陣が乗り込んだのも、このB寝台。上下2段ベッド2つが向かい合って、ボックスをつくる。

 いずれも車歴30年前後で、設備の老朽化は否めない。逆に言うと、懐かしいものでいっぱいだ。国鉄のマークがついた灰皿、たたまれた紙コップを開いて使う冷水器など、最近の電車では見なくなったものだらけだ。

 少し前までは、ソファが並ぶロビーカー、シャワー設備などもあったが、現在はなくなってしまった。70~80年代のブームの頃には、「走るホテル」と形容されたが、今やこころもとない。

 この日、個室は満室だったが、B寝台はざっとみて1~2割程度が埋まったのみ。鉄道ファンと老夫婦がほとんどで、背広を着たビジネスマンは見あたらなかった。

     ◇

駅弁で晩酌

 熱海-静岡 熱海を出たところで、夕食の時間としよう。私は「深川めし」。同行した別の記者は「栗おこわ弁当」。いずれも、東京駅で購入した駅弁だ。

 「はやぶさ」をはじめ、九州方面の寝台列車の食堂車が一斉に廃止されたのは1993年。現在は、車内にはソフトドリンクの自販機があるだけだ。明日の朝まで車内販売もなく、途中で買えるほど長時間止まる駅もない。なので、食料は乗り込む前に必ず買っておく必要がある。缶ビールなどのアルコール類も同様だ。

 ほの暗い寝台ベッドの上での晩餐は少し寂しい。とはいえ、目的地の時間も気にせずゆっくり食べられるのは寝台列車ならでは。流れる夜の風景を見ながら、味わうことにする。

 鉄道ファンの作家はたくさんいるが、夜行列車といえば内田百間を思い出さずにいられない。昭和20年代、戦後の混乱が少しずつおさまり、復旧しだした長距離優等列車に、何の用もなくただ乗り込んだ。そのスタイルを「阿房列車」と名付けた。当時、鉄道趣味そのものが一般的でなかったから、列車に乗ることが目的の旅というアイディアは理解されず、「阿房」と名付けた。だが、今は理解されたのかどうか、たくさんの「阿房」がいることは間違いない。

 その内田百間が、食堂車がない寝台列車に乗るときに必ず持ち込んだのが、熱燗が入った魔法瓶。今回、それを再現して持ち込んでみた。魔法瓶からシュルシュルと注ぐそばから、湯気が出る。日本酒独特の香りが鼻をくすぐる。温かさが体にしみる。とりわけ、冷たい車窓とのコントラストがいい。

 迫り来る九州ブルートレインの廃止で、そんな内田百間の世界を追体験できるのも、あとわずかだ。

     ◇

ベッドメイキング~眠る関西

 静岡-大阪「どうぞ、ごゆっくりおやすみください」

 21時ちょうど。チャイムとともに今夜最後の車内放送がある。今後は明朝6時まで車内放送をしないことを告げ、停車駅と到着時刻を丁寧に説明したあと、アナウンスを終えた。すぐに、廊下側の蛍光灯が暗くなり、続いて座席天井の蛍光灯が消えた。いわゆる「減光」だ。

 それに合わせてベッドメイキングをする。寝台1つに用意されたリネンは、シーツ、毛布、枕と浴衣。座席の荷物を床に置き、空いた寝台にシーツを敷き、枕と毛布を置く。これでベッドになった。

 魔法瓶の熱燗のほか、ウィスキーの水割りもなめながら、明日の予定をぼんやりと考える。すっかりうっとりした気分になり、予定より早いが横になることにした。

 目が覚めると、真っ暗な山の中だった。どうやら東海道線随一の積雪地帯、関ヶ原付近らしい。駅を通過する瞬間だけ、明かりが強くなり、またすぐに闇に戻る。

 23時47分、米原に到着。時刻表では通過になっているが、運転士の交代のために停車するという。交代する回数は意外と多い。東京-熊本間で、10回にものぼる。

 流れる景色に明るさが少しずつ戻ってきた。関西の中心へ向かっている。

 1時6分、いよいよ今夜最後の停車駅、大阪に到着。他の路線はすべて終電が出た後。ホームは閑散としている。ホームの案内板に「中国・九州方面」とあるが、現在大阪駅から九州へ向かう列車はこの1本のみ。廃止された後は、どうなるのだろうか。

 遠くの車両に誰かが乗り込んだ。今晩一番最後の乗客かもしれない。終電まで梅田で飲んで、列車で寝てるうちに家に帰ろう……そんな客だろうかと想像する。東京を出てすでに7時間。さまざまな客を乗せて、「はやぶさ」は夜を走る。

     ◇

瀬戸内の夜明け

 広島-新山口 「瀬野」。次に目が覚めたのは、聞き覚えのある駅を通過した時だった。「セノハチ」で知られる山陽本線の急勾配区間が終わったところらしい。午前5時20分。そろそろ広島に到着する時刻だが、どうやら遅れているようだ。まだ外は真っ暗。結局、広島には13分遅れで到着した。

 6時過ぎ。岩国を出た後、「おはようございます」の声とともに、今朝最初の車内放送が始まった。遅れは、加古川付近の線路点検のためだという。

「通勤電車の関係で、下関ではさらに遅れる予定です。お急ぎの方は車掌にお知らせください」

 驚くことに、寝台特急よりも通勤電車を優先するらしい。確かに、日々の通勤客のほうが数分の遅れにも敏感なのだろうが、列車番号「1番」を与えられた特急列車が、普通電車に先を譲るというのはちょっと複雑な気分になる。

 岩国をすぎたあたりで、瀬戸内海が窓一杯に広がる。東の方はうっすら赤くなりはじめている。朝はもうすぐだ。

 徳山から、待望の車内販売が始まった。この地方の名物駅弁「あなご飯」は限定品。知識のある乗客は、車内販売が乗り込む車両まで出かけて、ワゴンに並んでいる。

 通過する小駅のホームには制服姿の若者が見える。彼らにとって、またいつもの一日の始まり。列車は、何気ない風景を常に切り取りながら、次の街へ急ぐ。

     ◇

いざ九州 機関車付け替え、列車切り離し

 下関-博多 下関が近づくと、乗客のうち何割かは先頭の車両へと急ぐ。下関での機関車の付け替えを眺めるためだ。下関と門司の間は、関門海峡があり、列車は海底の下の関門トンネルを走る。そのため、この区間は、塩害対策をした専用の機関車が引っ張ることになっている。

 ここまで約1100キロを引っ張ってきたEF66とは、お別れだ。機関車のある先頭部分に集まった乗客の多くが、ここで記念撮影をする。

 関門トンネルをくぐると九州だ。九州最初の停車である門司では、機関車の付け替えのほかに、「はやぶさ」と「富士」の切り離しがある。東京から門司まで一緒に走ってきた2つの列車は、ここで熊本ゆきの「はやぶさ」と、大分ゆきの「富士」に切り離され、それぞれまた別の機関車を先頭に据えて、おのおのの終着地に向けて走り出すのだ。

 客車列車そのものが珍しくなった現在では、こうした光景を見られる機会はほとんどない。列車の長い行程の中でクライマックスといってよく、多くのファンをひきつけている。

     ◇

初冬の九州路~1300キロの旅の終着 博多-熊本

 10時30分、博多に到着。寝台特急は朝7時を過ぎると、自由席特急券と同じ値段で、乗ることができる。寝台特急の「昼の顔」だ。ただし、足の遅い寝台特急は、最新型の特急電車に何度か追い抜かれる。特急が特急を追い抜くのだ。車掌がしきりに車内を回り、急ぐ乗客には後続の特急電車に乗り換えるよう勧めていた。

 しかし、古い車両にゆっくり揺られながら移動するのも悪くない。モーターやエンジンの音がしない静かな車内は、初冬らしい暖かい日光が差し込んでポカポカと暖かく、ついもう一眠りしてしまいそうだ。

 12時少し前、玉名駅に臨時停車。ダイヤ上はすでに熊本に到着している時刻だが、遅れを他の列車に波及させないため、ここで特急電車2本に抜かれるという。この分だと、遅れは40分以上になる。ただ、もっと遅れがひどい場合は、途中の下関や博多で運転を打ち切ってしまうというから、まだマシなのかもしれない。

 12時31分。全長1293キロを18時間以上をかけて、「はやぶさ」は熊本駅の1番ホームにすべりこんだ。わずかながら、ホームには出迎えの人がいた。長距離列車の面影がまだ残っていた。

     ◇

「はやぶさ」の昼寝 熊本車両センター

 「はやぶさ」の車両の清掃、点検をするJR九州の「熊本車両センター」を訪ねた。東京ゆき上り「はやぶさ」の熊本発時刻は15時57分。つかの間の休息だ。必ず車体は水洗いをし、車内は掃除機をかける。多くの係員が、車両に出たり入ったりしながら、次の長旅への準備をしていた。


ソニー1万6000人削減 全世界、正社員含め

ソニー1万6000人削減 全世界、正社員含め(東京新聞)2008年12月10日

 ソニーは九日、二〇〇九年度末までにエレクトロニクス事業の正規社員十六万人の5%に当たる約八千人を、日本の本社を含む全世界で削減すると発表した。同時に派遣や請負社員ら非正規社員も全世界を対象に八千人以上減らす計画で、計一万六千人以上が職を失うことになる。ソニーは具体的な地域名は明らかにしていないが、異例の大規模リストラは国内外の雇用情勢に大きな影響を与えそうだ。 

 人員削減は、世界的な景気低迷に対応するために行う製造拠点の統廃合などに伴うもので、こうした合理化策により〇九年度末までに年間一千億円以上の費用削減効果を狙う。ソニーの原直史業務執行役員は「未曾有と言うべき逆境を乗り越えるためには、収益性の改善を迅速に進めなければならない」と説明している。

 製造拠点の統廃合では、〇九年度末までに現状の国内外五十七カ所から約一割を削減する。まずはビデオなどの磁気テープを製造しているフランスの工場など海外二カ所を、本年度中に閉鎖する予定にしている。

 また、投資計画も見直し、欧州向けの液晶テレビを生産しているスロバキア・ニトラ工場の増産投資を延期するほか、携帯電話向けの半導体生産を外部委託してコスト削減を進める。〇九年度のエレクトロニクス分野への投資は、六月に発表した中期計画より約三割削減する。

 <ソニー> 大手電機メーカーの一角。AV機器やパソコンなどエレクトロニクス部門が売り上げ全体の7割程度を占めている。グループ内にはゲームや金融を担う子会社を抱える。2001年3月期から2期連続で連結決算の純利益が100億円台となるなど低迷が続いたが、ハワード・ストリンガー氏が会長に就任して業績が回復。08年3月期の純利益は3694億円と過去最高となった。09年3月期は円高の影響などで業績予想を大幅に下方修正した。

イラク空自の活動実態判明

イラク空自が米軍要請で定期便(東京新聞) 2008年12月14日

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 イラクで活動した航空自衛隊が、米軍など多国籍軍の要請で、首都バグダッドと南部アリ(旧タリル)とを結ぶC130輸送機の「定期便」を新たにつくり、今年に入って週1回運航していたことが分かった。

 両地点ともイラク駐留米軍の拠点で、隊員は「多くの武装米兵を運んだ」と証言。空自機は米軍の指揮下で、兵員輸送の一角を担っていた実態があらためて浮き彫りになった。

 陸上自衛隊がイラクから撤収した2006年7月末以降、空自はクウェートを起点に週4、5回、「アリ便」「バグダッド便」「バグダッド経由アルビル便」の3ルートで定期的な運航を実施。空自幹部は「バグダッドへの飛行を始めたころからも不定期でアリ-バグダッド間を運航したこともあったが、(07年からの)米軍増派で常態化した」と明かす。

 アルビル以外の便は「すべて多国籍軍向け」(自衛隊幹部)で、空自機は米軍から「タクシー」と呼ばれていた。隊員は「空自機は米軍のいいように使われ、コマにすぎなかった」と指摘している。

 空自は04年3月からイラクへの空輸を始めた。821回飛行し、延べ4万6500人と物資673トンを運んだ。輸送人員のうち国連職員は約2800人で、陸自隊員を差し引けば3万人を超える米兵を空輸したとみられる。

 名古屋高裁は4月、空自機が武装した米兵を戦闘中のバグダッドへ空輸することについて「違憲」との判断を示している。

(中日新聞)

指示、視察、要請でアピール 首相、雇用対策に躍起

指示、視察、要請でアピール 首相、雇用対策に躍起(東京新聞)2008年12月2日

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ロフトの社員から話を聞く麻生首相=1日、
東京都渋谷区で(代表撮影)


 麻生首相が雇用対策への取り組みに力を入れている。景気悪化に伴い、新卒者の内定取り消しなどが社会問題化する中、迅速な対応が求められているためだ。二〇〇八年度第二次補正予算案に雇用対策を取り込み、民主党の「補正先送り」批判を封じる狙いも見え隠れする。 (佐藤圭)

 首相は一日夜、官邸で開かれた経済団体幹部との懇談で「政府は雇用と家計の防衛に全力を挙げる。産業界も雇用の安定と賃上げにぜひ努力していただきたい」と求めた。

 これに先立ち、首相はパートの大半を正社員に切り替えるなど、独自の雇用制度を導入した東京・渋谷の大手生活雑貨専門店「ロフト」を視察。雇用対策に取り組む姿勢をアピールした。

 雇用対策は、給付対象をめぐる迷走で批判が出ている定額給付金に代わる衆院選の目玉政策として公明党内で浮上。二次補正予算案の今国会提出見送りを確認した十一月二十五日の政府・与党の会合で、公明党の北側一雄幹事長が雇用対策の必要性を訴えると、首相は「いいじゃないか」と賛同した。

 厚生労働省は二十七日、「大卒三百人の内定取り消し」「三万人の非正規労働者の失業」などの調査結果を報告。公明党の着想と深刻なデータを踏まえ、首相は即座に自民、公明両党の政調会長を呼び、雇用対策の策定を指示した。

 一方、民主党は二次補正予算案の先送りに反発し、独自の経済対策関連法案で政府・与党との違いを際立たせようとしている。民主党の機先を制するためにも首相には雇用対策が格好のテーマに映ったようだ。首相は「きちんとした対応を二次補正、〇九年度予算で考える」と強調する。

 しかし、〇八年度第一次補正予算などを打ち出しながら、景気回復の兆しは見えない。与党が五日に取りまとめる雇用対策も、内定を取り消された新卒者への対応など緊急避難的なものにとどまりそうだ。雇用情勢の悪化が長引けば、野党に新たな攻撃材料を提供することにもなりかねない。

「再編」か「大連立」6割が望む…読売世論調査

「再編」か「大連立」6割が望む…読売世論調査(読売新聞)

激震・麻生政権
世論調査・支持率
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 政権発足からわずか2か月余で“麻生人気”が大きく失墜したことを示す今回の読売新聞世論調査で、最も注目されるのは「衆院選後の政権」として6割近くの有権者が「政界再編による新しい枠組み」(33%)か「自民党と民主党による大連立」(25%)を望んでいることだ。

 当初は期待を抱かせた麻生首相への失望は、有権者の「自民党離れ」を決定的にしただけではない。民主党も含めた今の政治全体への不満を拡大させたことを示している。

 麻生首相が「ポスト福田」の自民党総裁に選ばれたのは、その国民的人気の高さが“選挙の顔”として期待されたからだ。

 9月の総裁選告示直後の読売新聞社世論調査で、小沢民主党代表とどちらが首相にふさわしいかを聞いたところ、「麻生氏59%―小沢氏28%」と麻生氏が圧倒した。麻生内閣発足後の調査でも54%―26%(9月)、56%―23%(10月)、50%―22%(11月)とダブルスコアを続けてきた。ところが、今回は29%―36%と逆にリードを許し、「党首力対決」は小沢氏が制した。

 ただ、今回の調査では、麻生氏と小沢氏のどちらも選ばなかった人が35%に上り、これまでの最高になった。麻生首相に対する失望や不満が、ただちに小沢首相待望論に結びつくわけではないことを示すものだ。

 麻生人気急落の要因が、首相の度重なる失言や前言撤回、金融危機・景気対策のもたつきにあることは調査結果でも明確だ。とは言え、麻生内閣が臨時国会の会期を延長しながら、第2次補正予算案提出を年明けに先送りした背景に「衆参ねじれ」による国会運営行き詰まりへの懸念があることも否定できない。

 次期衆院選をにらみ、2大政党が政策より政局を優先しているように映る今の政治そのものに、国民は厳しい視線を注いでいる。自民支持層のうちで「自民党中心の政権」を望んでいるのは34%、民主支持層でも「民主党中心の政権」を望んでいるのは50%に過ぎない。政治の大きな変化を求める声は高まっている。(世論調査部 渡辺嘉久)

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